先日、グラントリノを見た。
上映が終ってもしばらく動けなかった。
これは、男の生き様を描いたドラマである。
デトロイトで自動車産業を支えてきた東欧系移民の男の生き様
戦争を経験した男の生き様
マッチョで保守的な思想の中で生きる男の生き様
家庭を顧みず生きたせいで晩年を寂しく過ごす男の生き様
もし、人間に原罪というものがあるとするならば、人生の終わりに男はそれをどうやって懺悔すべきなのか。
強さや、カッコよさというものは、姿形に宿るものではない。
男が少年との交流の中で変わってゆく姿に、惹き込まれてゆく。
頑固で、絶対に意見を曲げなかった男が、変わってゆくのは
健気に生きるアジア人少年の姿に新しい時代の男の生き様を見いだしたからだろう。
そして、それは移民の国アメリカがかつて持っていた美しさでもあった。
グラントリノ、それは強かったアメリカの象徴だ。
一つの時代が終わろうとしている。
この映画は、その時代の終焉に最高の鎮魂歌となった。
そこにはクリント・イーストウッドという男、そしてそれが代表するアメリカという“男”の死に様がある。
男の生き方ばかり鑑みてたから、ケツまでくたくただ(笑)。
詳細は町山智浩さんの解説でどうぞ↓
追記
老人と少年の友情物語というパターンは数あれど、単なる友情の物語ではなく
そこにいろいろなメタファーが隠されている。
町山智浩の本などで、アメリカという国をより詳しく知ってから見ると面白さは倍増する映画である。
特にモン族がアメリカに政治難民としてやってきた経緯を知ってると、この物語に隠されている戦争というものへの理解が深まる。
自己の実存を問うような姿や、違う文化を経験して変わってつく様など、ここ最近みた映画やドキュメンタリーに描かれていた僕の好きな要素がつまった映画である。
今まで見た映画ではベスト1。映画好きな人でも5本の指に入るくらいいい映画なので是非見てください!
2009/05/18