Spotify先生おすすめの「Follow Your Arrow」
少し前にNetflixでテイラー・スウィフトのドキュメンタリー映画「ミス・アメリカ」を見た。トランプ大統領の扇動によって社会が分断される中で、カントリー出身のアーティストとして苦悩しながらも、政治的な立場を明らかにし若い世代に発信していく姿は心を打たれた。ブッシュ大統領を批判したことで大批判にされされ、謝罪するまでに至ったディキシー・チックスの時代から、なにか進んだようで何も変わっていない。むしろ後退しているアメリカ社会の中で、どれだけの若者がテイラーの発言や行動で勇気づけられたことだろう。特に、政治的に保守的で共和党支持者が多い地域であれば、なおさらであろう。
けれども、テイラーは音楽性がカントリーから離れてかなりポップス寄りになっている。都会に出て垢抜けてしまったカントリー娘なので、そういう意味では田舎の保守的な地域で閉塞感を感じながら生きている少女たちにとって、共感とは少し違うステージに居るようにも思う。僕はカントリーが好きなので、いろんな配信サービスに課金しないで、ずっとサービスがおすすめする曲やプレイリストを聞き続けているのだが、かなりの確率で良い曲に出会える。テイラーよりも、もっとカントリーらしいカントリーを立っている同年代の歌手はいないかなと思っていたら Spotify先生やYouTubeミュージックにこの楽曲をおすすめされた。
ケイシー・マスグレイヴスのこの楽曲は、2013年にリリースと約7年前の楽曲で、2020年に閉塞感を感じながら生きている若者を代弁している訳ではないのだけれども、今にも通じる大切なメッセージを伝えている楽曲なのだ。そして彼女の等身大で肩肘張らないスタンスが、とても好きになった。YouTube動画の翻訳ボタンを押すと、日本訳も出てくるので、ぜひオンにして聴いてみてほしい。
マリファナといった刺激的なワードもさることながら、特にこのサビの歌詞が好き。
So,Make lots of noise Kiss lots of boys Or kiss lots of girls If that’s something you’re into
直接的ではないけれども、キリスト教福音主義を中心とした保守層から差別を受けて、苦悩している同性愛者の若者にも、”カントリー歌手”としての体裁は崩さずにメッセージを送っているようにも思える。
(2022年11月23日 追記)この楽曲について、Spotifyのインタビュー音源があるようだ。
音楽専門誌も高く評価
ビルボード誌は、この曲を「2013年ベストソング20」で2位にランクさせている。また、ローリング・ストーン誌が2019年に発表した「2010年代のベストソング100」でもランキング8位にしているそうだ。洋楽ファンなら知っている人も多いと思うが、日本での知名度はそれほど高くないと思われるので、テイラー・スウィフトは大好きだけど、他のカントリー系アーティストは知らないっていう人にもおすすめしたい。
ケイシーは、最新ヒット曲の「butterfly」でもカントリーミュージックのメインストリームを行きながら同様のメッセージを発信しているのでこちらもぜひ聴いてみてほしい。