中野サンプラザの思い出と
中野サンプラザ閉館で、もう中には入れないのかなと思っていたのだが、この3連休で開催された「さよなら中野サンプラザ感謝祭」というイベントで入館が可能だと知り、最後のチャンスだと思って行ってきた。
一念発起して就職した会社を解雇された後に、長兄が亡くなって、これからの人生をどう過ごすかを悩んでいた時期があった。そんなとき、ちょっと方向転換してみようと思って始めたのが、スポーツクラブのバイトである。
バイトは中野サンプラザのスポーツスペースと、千代田区総合体育館を掛け持ちしていた。バイトが楽しかったのは、千代田区総合体育館だったのだが、いろいろな人との出会いによって、2回目の大学受験を決意したきっかけの多くは、サンプラザスポーツスペースのほうにあったと顧みる。
それほどスポーツ経験もなく、変わり者のスタッフだった僕は、よくお話する会員さんも、他のスタッフとは少し違っていたように思う。
運動はそれほどしないけど、毎日クラブに訪れる高齢の男性会員さんがいた。お互いに波長があったのか、僕はその男性会員さんと、よくおしゃべりをした。
帰り際に会うと、おちょこをクイッとやる動作をして「この後は、キュッと一杯引っ掛けにいく感じですか?いいっすねぇ」といった感じで話しかける。そうすると、「そうなんだよ」といった具合に、いつもニッコリ微笑んでくれた。
その後、慣れない接客業で、ある会員さんを怒らせてしまったり、一部の人を除きスタッフとあまり馴染めてないということもあって、サンプラザスポーツスペースのほうは辞めることにした。
その報告を例の男性会員さんに伝えたところ「そうか、辞めちゃうのか、、、」と呟いたあと肩を落とし俯くと、すごく寂しそうな顔で黙ってしまった。僕は「また、遊びに来るんで、今度一緒に呑みに行きましょう!」そんなことを言って、その場を取り繕ったように思う。
結局、一緒に呑みに行くという約束は果たせなかった。ご健在かもしれないが、もう20年以上も前のことである。僕が辞めるといったときの顔を、今でも時折思い出すことがある。自分のことを、そんなに愛おしい存在と認めてくれた他人に僕ははじめて出会ったのかもしれない。
そんな思い出も、ゆっくりと溶かしてしまうような暑い暑い1日であった。
Post by @takemi0601View on Threads