ルディ/涙のウイニング・ラン(1993)
最も素晴らしいアメフト映画「Rudy」とは
僕の今の職場は外資系企業の中にあるフィットネスセンターである。仲のよいカナダ人のお客さんに、映像系の学部を卒業した人がいて、スポーツ映画でオススメを教えてもらった。その中の一本がこのルディだ。
「最も素晴らしいアメフト映画」と評されているのもうなづける。何度も号泣してしまった。少なからず自分と重なる部分があって感情移入しすぎた点を考慮にいれても、万人が感動できるスポーツ映画だと断言できる。なんと言ったって、これは実話なのだから。
『夢は人生の宝物』。それはルディがノートルダム大学フットボールチームを目指すきっかけとなった友人の台詞である。
大学編入という道を与えてくれた神父。その大学編入のための勉強を助けてくれたD=ボブ。ルディが試合に出場できるようにヘッドコーチに嘆願したレギュラー選手をはじめとしたチームメイト。そして、彼を影から支えてくれたグランド管理人フォーチュン。
最後にはノートルダム大学全学生が彼の夢を応援してくれる。その中でプレーするルディ。
この一瞬のためだけに、彼はすべてを捧げたのだ。
単なる「夢をあきらめない」というような単純なストーリー、感動秘話ではない何かがそこにはある。
その何かは見る人にとってそれぞれだろう。夢という言葉を語るのに恥じらいを感じている自分がいるのなら、この映画は是非見ておくべきだ。夢をあきらめるその前に。
主人公を演じるショーン・アスティンが好演している。『グーニーズ』で喘息の吸引器を使っていたあの少年の面影が重なって、“世代”にはたまらないものがある。デビッド・アンスポーの演出や、ジェリー・ゴールドスミスの音楽も、秀逸で実話を題材にしながらも、最高のエンターテイメント作品にもなっている。
僕が部活に入るきっかけになった一人に、ルディみたいなヤツがいた。何浪もして早稲田に入ってラグビー部員になったけど、最後の最後、4年生でやめちゃったと聞いている。彼は今、何をしているのだろうか。新しい夢を追いかけているのならいいのだけれど、彼がこの映画を見ていれば、とも思う。
余談ではあるが、アマゾンのカスタマーレビューによるとD=ボブのモデルになった方は現在連邦裁判所の判事だそうである。
いまのところ僕の見たスポーツ映画ではベスト。
周囲の笑い声に耳を傾けるな。愚直でもいい。目標に向かって邁進するんだ。そういう姿勢を見せれば、必ず理解者や応援してくれる友が現れる。
アメリカドリーム的な教訓に、嫌気を感じる人もいるだろう。でも、それもまた真実なのだということを、この映画は教えてくれる。
まさに“人生の宝物”に相応しい作品だ。
2009/11/12
(追記)主人公ルディのあだなGipperについて
DVDを字幕版に設定すると、主人公ルディはD-ボブからGipperとよばれていることに気づく。これが気になって、調べてみたら一人のフットボール選手にたどりついた。その名はジョージ・ギップ(George Gipp)。彼はもともと野球選手としてノートルダム大学に入るのだが、名コーチ、クヌーテ・クロニー(Knute Rockne)に見いだされ、アメフトの天才選手に育ってゆく。しかし、全国大会出場を前に彼は病死してしまう。このとき残した遺言が、ルディがはじめてファイティング・アイリッシュの部室に入ったときに壁に掲げられていた銘文だ。
I’ve got to go, Rock. It’s all right. I’m not afraid. Some time, Rock, when the team is up against it, when things are wrong and the breaks are beating the boys, ask them to go in there with all they’ve got and win just one for the Gipper. I don’t know where I’ll be then, Rock. But I’ll know about it, and I’ll be happy.
Win One for the Gipper(ギッパーのために、一度だけでも勝ってくれ)。ギッパーとは彼のあだ名であり、D-ボブは最も有名なノートルダム大学のアメフト選手の名前で、ルディをGipperと呼んでいるのだ。
話しをもどそう。この当時のノートルダム大学のライバルは陸軍チームであった。ギップの死後、一度陸軍チームに勝ったものの、その後ノートルダム大チームはスランプに陥り、全国大会においては陸軍チームに完敗してしまう。再度、陸軍との試合の際に、クヌーテ・クロニーは怪我を押して車椅子で試合を指揮する。その際、ギップの遺言であるWin One for the Gipperという言葉で選手を鼓舞したのである。その言葉がチームに勢いを与え、ノートルダムは陸軍を敗るのである。
このクヌーテ・クロニーとジョージ・ギップの物語は、1940年ロイド・ベーコンによって『Knute Rockne: All American』という作品となって映画化されている。この映画でギップを演じたのが当時29歳のロナルド・レーガンで、ギッパーという名は彼のあだ名にもなった。後の大統領選でレーガンがWin One for the Gipperという言葉を演説中に使ったのは有名な話しなんだそうである。
映画Rudyは、このKnute Rockne: All American以来、はじめてノートルダム大学の許可をえて同校で撮影された映画であり、ルディはギッパー同様いまでも学園のヒーローであるらしい。
この映画を見る際に、このような魅力あふれるチームとキャンパスライフが、映画の背景としてあることはスポーツファンとして知っておいても良いことかもしれない。
2009/11/14(加筆修正してあります)