見上げてごらん夜の星を

「見上げてごらん夜の星を」という歌は、様々な歌手にカヴァーされており、日本のスタンダード・ナンバーになっているが、もともとは坂本九主演の同名ミュージカル&映画のの劇中主題歌だった。この物語は「金の卵」として地方から東京へ集団就職し、定時制高校に通っていた若者たちを描いた作品であったという。単なるラブソングとしてでなく、そうした背景を知った上で、この歌を聴くとまた違った心象風景が広がり、当時どれだけの夜学生がこの歌で励まされたのだろうかということも伝わってくる。

私もかつて夜学に通っていた。夜学と言っても大学のことで、しかも勤労学生ではない。受験で単に昼間の学部に落ちたから夜間学部に入学しただけなのだが、芸術系の学問を座学で理論的に学べる人文系の学部という非常に狭い選択肢の進路を目指していた私にとって、十分すぎるほどのカリキュラムが用意され、非常にユニークで自由な雰囲気に溢れていた、その夜間学部に入学できたことは、今思うととても良かったことのように思う。

ただ、入学当初、不本意な思いがなかったと言えば、それは嘘になる。大学入学までにはビリギャル以上のサクセス・ストーリーと、一時期天狗状態になってAO受験で受かった大学を蹴ってしまったことを後悔した日々(笑)があるだけに、自分が選択ミスをしたのではないかという鬱積した思いもあったのだろう。

私が早大第二文学部入学した年は学部改革によってカリキュラムが大幅に変わった年で、学部入学式のときに、はじめて夜に行う学部入学式であることを学部長が述べていた記憶がある。そのステージで、応援団の先輩が壇上でエールを行う前に「永六輔、タモリ、吉永小百合を輩出したのが第二文学部」と言っていた。

有名人の威光を笠に着て、自分たちもすごいなんてことを思う気は毛頭なかったが、そうした先輩(中退が多いが 笑)がいるということが、少しづつ自分に与えられた環境への愛着を感じるきっかけになったと思う。

夜の文キャン校舎からスロープを眺めることが何度かあった。見上げると夜の星がかすかに見えた。「きっと永六輔は、この同じ夜空を思い浮かべて、あの歌の作詞をしたに違いない」そう思って自分を励ました、あの夜を思い出した。

永六輔さんの、ご冥福をお祈りします。

 

 

 

 

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