やらなければいけない案件がいくつかあって、それが気になっていると、なかなかブログの更新ってできないものですね。たぶん、ちゃんとコラムやエッセイのようにまとまった文章で記事をアップしなければいけないと思っているからでしょう。
今も原稿の締切があるわけですが、このブログを書くことも大事なことなので、GW中に見た「ダンガル きっと、つよくなる」ついて感想を書きたいと思います。
インドの女子レスリングの映画ということで、かなり前から高校時代からの友人に「一緒に見に行こう」と言われていて都合を合わせて、見てきました。
丁度、日本の女子レスリングのパワハラ問題にぶつかってしまい、プロモーション的に、すこし不運なタイミングとなってしまった同映画。おそらく、吉田沙保里選手あたりを試写会のイベントに呼ぶ予定だったのでしょうが、水道橋博士がイベントに参加していましたね。
「バーフバリ」にハマって何度も見ているという友人なので、最近のインド映画のクオリティはすごいという情報も事前に聞いていた状態で見たのですが、思っていた以上に作品として完成度の高い映画でした。
スポーツ映画にありがちな「Besed On Ture Story」ものなのですが、父親のマハヴィル、娘のギータ、バビータ以外は、架空の登場人物ということになっています。
インドの国内チャンピョンまでのぼりつめたマハヴィルが生活のために夢半ばで引退。息子にその夢を託そうとしたが、生まれてくる子供が全て女の子という、少々コミカルな展開で物語は始まります。子供に夢を託すということを諦めかけたときに、ある事件がきっかけで、娘達にレスリングをさせることになっていくのですが、詳細は映画の公式サイト、もしくは実際の映画を見ていただくのが一番でしょう。
この映画、最初は娘に無理やり夢を押し付けているような展開なので、観る人によっては虐待のようにも受け取られ、少々つらいかもしれません。しかし、インドの片田舎という土地柄や時代背景、宗教や文化など、現代の欧米的な価値観で断罪していいのかというと、それは違うことだろうと思いながら少し我慢して見て欲しいと思います。予告篇にも登場しますが、中盤、ギータ、バビータの友人から父親の思いについて語られるシーンがあるのです。
そこからは、葛藤を交えながらも父と娘の サクセスストーリーが小気味よく展開し、最後まで観る人を飽きさせない内容になっていきます。父と息子の物語と同じく、父親を超えていく場面や、女性としての自由を謳歌し悩み始める場面などは、スポーツものに興味のない人にとってもヒューマンドラマとして、非常に楽しめる内容です。また、甥っ子が出てくるのですが、彼がコミックリリーフとして非常に良い役割を果たしており、シリアスな内容を、ほどよく和らげてくれています。
映画を見た後、友人から、レスリング経験者として、レスリングのシーンがリアルだったかどうかを尋ねられました。僕は、レスリング経験者といっても素人に毛が生えた程度なので、あくまで弱小な元レスリング選手の個人的な感想なのですが、(実際はどうなのかはわからないが)役者の動きがこの人はレスリング経験者なのだろうなと思わせるだけのリアリティがありました。スポーツ映画の場合、試合の部分で間延びしてしまい、スポーツ自体に興味のない人にとっては助長に感じてしまったり、逆にそのスポーツ経験者にとって、不自然な展開だったりすることが多いのです。しかし、この映画については、そうしたものを感じなかった。現行のルールではなく、3ピリオド制(2ピリオドを取ったものが勝ち)で、3ピリオド目で決着がつかない場合はコイントスを行うという旧ルールなので、リオオリンピックを熱心に見ていた人には違和感もあるかもしれません。また、女子選手の試合にしては、投技やビックポイントが沢山出てきます。これは、おそらく実際の試合をトレースしたのではなく、ストーリーに合わせてドラマティックな内容になるように試合内容も演出されていると予測しますが、そういうことを鑑みても、特に荒唐無稽で強引な試合展開であると感じる部分はなく、レスリングのルールを良く知ってる人が脚本を書いているということが伝わってきました。
友人いわく、レスリングは詳しくないけど、アクション映画のような感じで、エンターテイメントとしてスポーツシーンを楽しめたとのこと。一方で僕は、今日本でも問題となっている、女性の社会進出や人権といったテーマに対しても、大きな問題提起をしてくれるヒューマンドラマとして非常に感銘を受けました。尚、物語のクライマックスは、コモンウェルスゲームスという旧イギリス帝国植民地の国々が参加して行われる国際大会が舞台です。アメリカでは映画やドラマで学生レスリングについて描かれている作品が沢山あるのですが、日本で上映・放映されるような作品は少ないのが現状です。おそらく一般の人にはレスリングの物語=オリンピックが舞台でなければいけないというある種の先入観があることでしょう。そういった固定観念も、いい意味で崩してくれる映画です。
ちなみに、ダンガルとは「レスリング競技」「人間の尊厳を表している」「情熱に溢れたファイター」「闘い続ける者たちを称える」などの意味があるそうです。
上映館も少なく、そろそろ公開を終える映画館もあるようですが、少しでも興味を持った人は見て損のない映画だと思います。特に、女性に、この映画をおすすめしたいですね。