友人が僕に是非読んでほしいということで貸してくれた本である。
僕のやりたいことに役立つからという理由だったが、そんなこと以上に僕はこの本に、この人の魅力に惹き込まれてしまった。 なぜ友人が僕に強く勧めたか、読んでいくうちにわかった。これはストーリー作りのための参考書としてでなく、僕の人生にとっての参考書になり得るものだから、勧めてくれたのだ。
僕はこの本を、大学時代の部活の仲間やスポーツ科学部の同期に(特にスポーツ選手)に勧めたい。
将棋界の話なので、あまりスポーツに直接的には結びつかない。しかし、将棋の世界は勝負の世界であり、その意味においてスポーツと強く共通する部分をもっている。
村山聖という棋士が、どのように勝負にこだわり、どのように人生を生きてきたかということは、スポーツ選手が競技生活の目標と対峙するとき、必ず役立ってくれると思う。
もちろん、スポーツ選手以外にも勧めたい一冊だ。
個人的に忘れられないのは聖が二十歳になったシーン。
それと、「牛丼は吉野家じゃなきゃ意味がないんですよ」(笑)
重い病気を煩っている人の人生なのに、聖の純粋で屈託のない性格が、読む人の気持ちを和ませる。
そして、それ以上に微笑ましく、羨ましくもある森信雄との師弟関係。
師弟関係にも無償の愛というものが存在するんだということに、感銘せざるを得ない。
それ以外にも羽生善治を中心としたライバルや友人関係にも、心打たれるシーンが多く、そうしたものの全ては著者、大崎善生の村山に対する思い入れと、作家としての才能によるものである。
聖のような魅力的な人間でありたい。そう思わせる一冊であった。
2009/04/11