サンプル記事:スポーツ科学とは
SEO対策を兼ねて昔かいたボツ記事をコンテンツに利用しようという試みを始めている(笑)。今まで「タダで記事書いてよ」系や、テストライティングと称し結果として採用もされずボツになってしまった記事が多数ある。中には、客観的に見てもよくまとめてある記事もあるので、それをサルベージすることにした。こうしたボツ記事の著作権はどうなるの?と思うが、基本的に著作権を譲渡するといった契約をしていなければ公開するのに問題はないと思う(今後公開予定のテストライティングでボツになった記事については先方に確認済み)。
下記でサンプル記事として公開するのは「お金は出せないが、コラムで連載を書かないか」と誘ってもらったが、ノルマ等も指定され、途中でこれは引き受けるのは良くないなと思って断った案件で事前に書き溜めておいた記事だ。スポーツ系・体育系の進路を志望する中高生を読者に想定して「スポーツ科学とは何か」をわかりやすく説明する内容になっている。
スポーツ科学とは何か
▼スポーツ科学という学問領域について
スポーツ科学とは様々な学問領域を含む複合科学で、人文科学、社会科学、自然科学すべてにまたがる学問。比較的新しい学問領域だ。スポーツ歴史学、スポーツ哲学、スポーツビジネス、スポーツ法学、スポーツ医学、スポーツ生理学など既存の学問領域におけるスポーツに関連する部分を統合、再編したものがスポーツ科学であるといっていい。
スポーツに関連すれば、すべてがスポーツ科学になる。スポーツと芸術なんて、一見結びつかないように見える。けれども、ギリシャ・ローマ時代のオリンピア競技に関連した美術や、レニ・リーフェンシュタール監督の「民族の祭典」という記録映画などはスポーツ科学を学ぶ人にとっては教養の一つ。「フィールド・オブ・ドリームス」や「タイタンズを忘れない」といったハリウッド映画や、みんなの大好きな「スラムダンク」や「あしたのジョー」などの漫画を研究することだってスポーツ科学になる。スポーツに関連するありとあらゆる物事が、スポーツ科学を構成しているんだ。
▼スポーツ科学と体育学の違い
普段、僕らはスポーツと体育は混同して使っているけれど、学問領域におけるスポーツ科学と体育学は明確に違う。体育学とはもともと教育学の一領域。だから体育学部というのは、基本的に体育の教員養成を基本としているところが多い。体育学は英語で言うとPhysical Educationで、欧米の大学でもSports ScienceとPhysical Educationは違う学問として扱われている。スポーツ科学は今まで説明してきたように、教育学とも関連しているが、その一部分ではない。
最近の日本の大学動向では、体育学部よりもスポーツ科学系の学部・学科の新設が増えている。体育大の名門、日本体育大学も大学の英語表記をNippon College of Physical EducationからNippon Sport Science Universityに変更した。
でもこれってなぜなんだろう。もちろん、今までの体育学ではカバーできない分野が出てきたことも関連しているけど、それだけではスポーツ科学部ブームは説明できない。
その答えは日本の体育学の起源にある。体育というのはもともと明治時代に『富国強兵』の『強兵』を育成するための『国民体育』として誕生した。だから、日本における体育っていうのは軍国主義の影響をかなり受けている。体育会系っていうと、理不尽な年功序列の縦社会を想像したりする人は多いんじゃないかと思うけど、そういうイメージの根底に流れているのはこの国民体育。もちろん、欧米列強の中で日本が生き残っていく上で国民体育の果たした役割は大きい。体育会出身者が日本企業で高く評価されるのも、躾や組織における規律という面での評価があるからで、全てが悪いという訳ではない。けれど、こうした国民体育を土台にした学校教育における体育によって、沢山の体育嫌いやスポーツ嫌いを生み出しているのも事実なんだ。
オリンピック等の国際試合が報道されるときに、日本選手は、スポーツを楽しんでいないって、よく言われることがある。日本選手の活躍には、決まって涙を誘うエピソードと、つらい練習や困難を乗り越えてやっとつかんだ栄光という物語がつきまとう。厳しくてつらい練習に耐えて、やっとの思いで表彰台に立ち、涙する選手を見て人々は感動する。でも、好きでやっていることのはずなのに、ツライって思うのはおかしいよね(もちろん肉体的にツライのはわかるけど)。
一般の人に関してもスポーツに対して辛い、キツいといったイメージを持った人は多い。医療費を抑える上でも、健康というのは現代のキーワードで、その健康のためには運動が必要になる。だから日本政府は運動をしましょうって躍起になっている。だけど、いままでの体育という経験の中でスポーツや運動が嫌いになっている人が沢山いるから、メタボリックシンドローム予防のために運動をしましょうっていってもなかなか効果がでない。
こんなふうにトップアスリートも、一般の人もスポーツに対するマイナスイメージを沢山抱えているのが日本の状況だった訳だ。これでは、スポーツ先進国になれないし、国民の健康生活の向上を計る上でも支障がある。そういう事も含めて、今までの体育教育と体育学を見直す必要が出てきたんだ。
スポーツの元々の意味はルールのある遊び。欧米ではスポーツは、楽しくて、ストレスを発散するもの、戯れという意味合いが強い。ある種の文化的なコミュニケーションツールとしての機能を持っている。そういう欧米のスポーツと日本の体育を、学者や有識者が比較し日本にも体育とは異なったスポーツ科学が必要だと考えるようになったんだ。
スポーツというものをポジエティブなものとしてもう一度捉え直す意味で、これはとても重要な転機といえる。今までは体育の指導者というのは運動やスポーツの得意な人がなるのが通例だった。だけど、スポーツって言うのは得意な人のためだけにある訳じゃない。オリンピックで国力を見せつけるための指標としての機能だけではいんだ。それよりも、僕たちの身体や心がスポーツをすると、どう変化するのか、スポーツというものは社会においてどのような役割を果たしてきたのか、または果たすべきなのかってことを考えられる人が今求められている。スポーツ系の学部では、実技テストなしに受験できるところが増えてきたのもそういう理由だ。みんながスポーツを好きになるために日本においてもスポーツ科学が導入されるようになってきたというのが、スポーツ科学部ブームの根幹なんだね。
▼スポーツ科学に関連のある学問領域
今までスポーツ科学と、体育学に関して説明してきた訳だけど、スポーツを勉強したいと思ったら、必ずしもこれらの学部を選択しないといけないという訳じゃない。あまり知られていないが東京大学には、身体運動科学研究室っていうのがある。ここでは、バイオメカニクスや運動生理学など、スポーツに関連した事象でも、特に“運動”を中心にして研究が進められている(運動とスポーツの違いはまた別の機会に)。神戸大学には発達科学部という学部がある(注:現在は学部再編によって学部はなくなっている)。ここでは、人間が産まれてから死ぬまでの“発達”の中で、スポーツや運動がどんな役割を果たしているかという研究が行われている。医療系の大学をはじめとして健康科学部という名称の学部もスポーツ科学部同様にブームである。これら、運動科学、発達科学、健康科学などといったものの上位領域には、人間に関する事柄全てを包括した親玉、人間科学という学問領域もある(スポーツも基本は人間のするものだから、スポーツ科学もこの人間科学の下位領域に存在する)。
それぞれの学問領域はスポーツ科学と異なるが、かといって全く違う訳じゃない。外国学部の英語学科で学ぶこと、文学部の英文科で学ぶこと、教員学部の英語科で学ぶこと、国際系の学部で学ぶことはそれぞれ異なっているけれど、密接にリンクもしている。それと同じでスポーツ科学は、体育学、健康科学、運動科学、発達科学などの学問と様々な側面でリンクしている。違うのは、研究対象を見る学問的視点だったり、実際に応用・実践していく領域だ。だからスポーツに関連した物事ついて勉強したいなら、この中のどの学問を選んでもいいわけだ。また、最初に言ったようにスポーツ科学は複合科学な訳だから、経済学部や法学部に入って、スポーツビジネスやスポーツ法学を学ぶことも出来る。現に、そのような学部でスポーツを専門に研究している先生も沢山いる。それに大学だけじゃなくて、スポーツや医療に関連した専門学校でも、スポーツについて学ぶことはできる。
だた、スポーツ科学の特性は、既存の学問領域や専門分野に限定されず、スポーツというものを軸に、学問領域を再構成した学問な訳だから、スポーツについての様々な教養を身につけたいという人にとってはピッタリの学問なんだ。
2013〜14年頃に書いたものなので情報も古くなっていて、ここで公開するために少々加筆修正した。ちょっと今読み返すと多少主観が入っているように感じる部分もあるが、スポーツ科学というキーワードがたくさん入っているので、SEO的にはなかなかよいコンテンツだと思う(笑)。主語が「僕」になっているのが気になるかもしれないが、このボツ記事はシリーズで、他にいくつか記事があるので、これを基にして漫画などを作っても良いかなと思った。